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建築費上昇でニーズに変化 令和8年地価公示を読み解く
カテゴリ:業界NEWS  / 投稿日付:2026/05/29 09:01

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地価情報から法令改正、トレンドなど様々な情報を濃縮してご提供しますので是非ご参考にしてください。

 

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建築費上昇でニーズに変化 令和8年地価公示を読み解く

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国土交通省が3月に発表した令和8年地価公示では、全国の地価は全用途平均+2.8%となり、5年連続で上昇しました。継続的な地価上昇は、不動産市場が好調であることを示しています。

一方で、建築費上昇の影響が全国的に色濃く表れるなど、変調も見てとれます。地価公示の資料から、ニーズの変化を読み解きます。

 

地価公示とは何か?

 

 地価公示は、毎年1月1日時点の標準地の1㎡あたりの正常な価格を「公示価格」として国が公表する制度です。公示価格は「公示地価」とも呼ばれます。公示価格は、正常値を知る物差しとして、不動産取引の指標や公共事業用地価格の算定基準になっています。

令和8年は、全国約25,600地点の標準地を、約2,200人の不動産鑑定士(鑑定評価員)が評価し、公示価格が決定されました。

 正常な価格とは、売り急ぎ・買い急ぎといった特殊事情がないことを前提とした価格のことで、実際の取引価格とは異なります。たとえば都心部の非常に人気が高いエリアでは、取引価格が公示価格を大きく上回ることがあります。逆に、土地取引が少ないところでは、取引価格が公示価格を下回ってしまうこともあります。

 

各圏域の地価の動きを追う

 

 令和8年を含めた過去5年の地価公示の結果を図表1にまとめています。地価公示の全体像を知るには、三大都市圏の各都市圏の状況と、地方圏を構成する「地方4市」(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)および「地方その他」の概況をつかむ必要があります。それぞれ住宅地・商業地ごとの視点もあります。簡単に、令和8年のこれらの概況をまとめました。

 

 

図表1

 

 

── 東京圏 ──

 

住宅地 東京23区のうち中心部の14区と、千葉県流山市、茨城県守谷市の合計16区市で10%超の高い地価上昇が見られました。東京都心では、高価格帯のマンションでも購入できる財力がある富裕層の強い需要が、住宅地の地価上昇のけん引役となっています。流山市と守谷市は、つくばエクスプレス(TX)沿線の高い住宅人気を受けての上昇です。

商業地 東京23区のうち中心部の18区と千葉県流山市、茨城県守谷市の合計20区市で地価は10%超の上昇を示しました。大型の再開発事業が進展するエリア、外国人観光客が増加しているエリア、利便性がきわめて高く商業と住宅(マンション)の需要が競合するエリアでの上昇が顕著です。

 

───大阪圏───

 

住宅地 10%超の上昇は、大阪市の浪速区と西区の2区。富裕層向けの高額物件の需要が強く、中心部の供給不足感から周辺エリアにも需要が波及し、地価が上昇した地点が多く見られました。大阪郊外部や、京都・兵庫・奈良の周辺各県でも、交通利便性が高い場所を中心に、広く昨年より上昇幅を拡大させるエリアが見られます。

商業地 大阪市内は中央区など10区、堺市の南区と北区、京都市の南区など5区が10%超の上昇を記録しました。大阪圏はなんといってもインバウンド観光客の活況が商業地の力強い上昇を支えています。

 

─── 名古屋圏 ───

 

住宅地 中心部の愛知県名古屋市内は全16区がプラスを維持しましたが、最も高い上昇を示した熱田区(6.3%、昨年8.4%)も含め、12区で昨年より上昇幅が縮小しました。10%超の上昇を示した市区は名古屋圏全体でゼロでした。住宅の需要は底堅いものの、建築費の上昇の影響で住宅の売れ行きが鈍っています。

商業地 名古屋市全16区中11区が上昇幅縮小、天白区は昨年と同じ3.9%、オフィス空室率が低下した中区など4区が上昇幅拡大となりました。上昇継続は基調としつつも、地価や建築費上昇が上昇幅縮小の要因となっています。

 

─── 地方4 市───

 

住宅地 4市ともプラスを維持したものの、札幌、仙台、福岡の3市で上昇幅が縮小しました。3市には、地価と建築費の上昇の影響が色濃く表れました。これらを要因とする住宅価格の高騰が買い控えを招き、住宅の売れ行きが鈍化しています。

商業地 インバウンド観光客の増加で中心部の店舗・ホテルは好調。地価上昇が継続するも、地価や建築費の上昇で再開発事業の遅れや計画見直しが発生。開発の慎重姿勢につながり、広島を除く3市で上昇幅が縮小しています。

 

─── 地方その他 ───

 

住宅地 全体としては前年から横ばいとなりましたが、局所的に、インバウンド人気が高い観光地(長野県白馬村など)、世界的な半導体メーカーの工場進出地(北海道千歳市や熊本県菊陽町・大津町・合志市)では住宅需要も強く、勢いのある地価上昇が継続しているエリアがあります。一部では、建築費上昇で価格が高騰したことから、住宅取得を控える動きが発生し、上昇幅が縮小するエリアも。

商業地 上昇幅は昨年より拡大。住宅地と同様、インバウンドが増加した観光地(岐阜県高山市、長野県白馬村など)や半導体メーカー進出地では、事務所・店舗・ホテルの需要が地価を上昇させています。

 

 

図表2

 

 

 

図表3

 

 ここで、現在の地価上昇をもたらす要素を図表2にまとめました。上昇率の全国トップ10を見ると、特に上位ではインバウンド、半導体が強い要素であることがうかがえます(図表3)。

 全国・全用途平均の2.8%は、バブル崩壊後で最大の上昇率です。しかしひと言で「地価は全国的に上昇」といっても、東京・大阪の都市部は富裕層マネー、インバウンド需要で力強い上昇、名古屋および地方の地価上昇をけん引してきた地方4市は成長鈍化という特徴を内包するのが令和8年地価公示です。そして、鈍化というマイナス方向への圧力をもたらした要因が、建築費の上昇です。

 

網羅的資料「価格形成要因等の概要」

 

 国交省は、地価公示で毎年膨大な量の資料を公表します。その1つに、公示価格の決定を担う不動産鑑定士の都道府県の代表者が作成した「価格形成要因等の概要」があります。北海道~静岡県版、愛知県~沖縄県版の2分冊で、合計すると300ページ近くにもなる、都道府県ごとの詳細な地価動向の資料です。本稿では北海道~静岡県版を「東日本」、愛知県~沖縄県版を「西日本」と呼ぶことにします。

 「価格形成要因等の概要」の令和8年版と令和7年版を比べると、令和8年版では明らかに「建築費」への言及が増えました。単純に出現回数をカウントしただけでも、令和7年版は東日本23カ所+西日本39カ所=合計62カ所。令和8年版は東日本28カ所+西日本55カ所=合計83カ所に増えています。多くは「上昇」「高騰」といった言葉とともに用いられ、令和8年版からは、コスト圧力としていかに地価に影響を与えているかが伝わります。

 建築費の上昇は、住宅地では住宅価格の高騰によって需要の減退を発生させ、商業地では再開発プロジェクトの延期や見直しを招き、新規の不動産投資にも停滞をもたらしています。建物の建築費は、地価ほど劇的な地域差(価格差)はありません。土地・建物の総コストのうち建物のコスト比重は、土地の安い地方ほど重くなります。建築費の上昇が需要を減退させる、つまり地価の下落圧力となって表れるのは、大都市より地方部が先行することになります。「価格形成要因等の概要」で西日本のほうが「建築費」の言及回数が多いのは、東日本より郊外・地方の割合が高いためだと推察されます。

 

 

名古屋圏の鈍化が目立つ背景

 

 特に個人の実需が需要の中心となる住宅地は、建築費の上昇がすぐに需要減退に直結します。この特徴が最もわかりやすく出ているのが名古屋圏です。名古屋圏は、中心である名古屋市以外の構成都市の規模が、東京圏・大阪圏に比べ小さいという特徴があります。現在の地価上昇をもたらす大きな要因の1つ「インバウンド需要」も、東京・大阪に比べると弱いところがあります。そこへさらに建築費の上昇です。名古屋圏の住宅需要は、富裕層や投資マネーより、分厚い中間層が中心です。「価格形成要因等の概要」の愛知県の説明では、建築費上昇による住宅価格の高騰で「相対としては住宅の取得意欲に陰りが生じており、上昇率は鈍化している」と記載されています。

 地方の地価のけん引役だった地方4市も同様です。地方4市は、コロナ禍で全国的に地価がマイナスに陥った令和3年もプラスを維持していましたが、減速が見て取れます。広島駅の駅ビル開業や路面電車新ルートの開通による利便性の向上で住宅・商業とも昨年以上の上昇率となった広島市を除き、3市で上昇幅が縮小しました。3市いずれも建築費の上昇が地価の下落圧力となって作用したことが示されています。

 令和8年地価公示は、建築費を吸収できる大都市以外では、上昇幅の縮小が目立つ結果となりました。コロナ禍後の景気回復による「需要主導の上昇」だった令和7年から、令和8年はコストの負荷を背負っての「選別的な上昇」にシフトしたわけです。

 建設業界の人手不足による労務費の上昇は継続、資材高も終わりが見えず、今後の建築費に下落の要素は見当たりません。新築に依存する事業モデルはますます厳しい時代になるなかで、網羅的な地価の資料である令和8年の「価格形成要因等の概要」から、これからの不動産ビジネスを考えます。

 

地方で中古住宅のニーズ高まる

 

 住宅価格の高騰で、需要の変化が起きていることを示す記載が、地方部の住宅地に見受けられます。

 

「建物価格が大きく上昇しているため、土地建物の新築販売価格が値上がりしているほか、中古住宅の需要も高まっている」(秋田県住宅地)「建築資材や人件費の高騰による建築費の上昇により、建売住宅・注文住宅の価格が大幅に上昇しているため、予算超過となり、新築購入から中古物件へ需要転換するケースが増えているほか、割安感のあるエリアへのシフトもみられた」(岐阜県住宅地)「物価高や建築資材の高騰により新築物件を諦め中古物件を買う動きや土地価格を抑えるため中低価格帯や古い住宅団地などやや条件の劣る不動産にも需要が増えつつある」(長崎県住宅地)

令和8年地価公示「価格形成要因等の概要」より

 

 令和7年版には、地方部で「中古住宅の需要が高まる」という旨の記載はほとんどありませんでした。土地が安いため新築を建てることが選好される地方部で、中古住宅の需要が高まっているという報告は、これまで以上に仲介と再生が重視されていくという示唆に他なりません。中古住宅を仕入れリフォームして販売する買取再販は、「都市部×マンション」を主戦場とする事業ですが、ニーズの高まりで「地方×戸建て」のさらなる拡大が見込まれます。既存物件の用途変更や空き家管理といった中古住宅を核とする周辺ビジネスも、今後はより機会が増えるでしょう。

 高い上昇を続けるところとそうでないところ、二極化が進んでいることも地価公示では鮮明になりました。二極化は「大都市と地方」だけでなく、大都市の中、そして地方の中でも見られます。同じ市内でも、上がっているところとそうでないところが、これからよりはっきりしていくことでしょう。得意とする事業エリアのこうした変化を、敏感に見きわめる力が不動産業者には求められます。

 

「地縁取引」は最後の需要?

 

 

 人口減少が進む地方の過疎地域では、需要の減退により地価の下落に歯止めがかかっていない状況です。

 「価格形成要因等の概要」からは、地価の下落が目立つ過疎地域の取引に共通点があることが伝わります。

 

「需要者は当町に地縁、血縁関係を有する個人が大半」「従来より地縁的選好性が強く市場規模が小さい」「取引される事例も地縁者や隣地売買によるものが多く、さらに人口減少が進んでおり、地価は依然として下落傾向」

令和8年地価公示「価格形成要因等の概要」より

 

 過疎化した地域の最後の土地需要は、地縁取引が中心になると示されています。

 不動産業者の皆さまには、地縁すなわち地域の人々の繋がりを熟知し、地縁取引を安心・安全なものとしてサポートする役割が期待されるところです。また、地縁取引を最後の需要とせず、新たな需要を生み出し、まちに活力をもたらす提案力にも期待したいと思います。

 一方で、取引が少ない地域では、不動産業者が撤退しているのもまた事実。日本の1,747市区町村のうち、宅地建物取引業者の事務所がない自治体が235自治体あります(国交省調べ、令和8年1月時点)。宅建業者ゼロ自治体の多くは、地方部の自治体です。

 人々の不動産取引の安全・安心を支える取り組みが、過度な業者負担に依存するものではないよう、行政には地域の不動産業者が仕事をしやすい環境整備も求められます。

 

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本日は以上となります。

 

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次回もどうぞお楽しみに!

 

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